「新規事業の取引社数が倍増に!老舗企業を復活させた“若手GRIT人材”の活躍とは」
プロフィール
丸山 晃司 様
株式会社丸山製麵 取締役
大学卒業後、(株)ECナビ(現CARTA HOLDINGS)に新卒入社し、新規事業開発や営業統括を歴任。2018年に家業である株式会社丸山製麺へ入社し、取締役就任。
バックボーンであるIT・マーケティングの知識・経験を活かし、「食」×「IT」 の領域にてビジネスを展開。2021年9月冷凍食に関わるあらゆる事業者が集う「フローズンエコノミーラボ」を発足、その後2022年5月に一般社団法人フローズンエコノミー協会を設立、理事へも就任。
次世代経営者が直面する「実行者の不在」という課題
創業50年を超える老舗、株式会社丸山製麺。伝統的な製麺技術を守りながら、近年は新たな販路や商品を追求し、地域に根ざした「食のスタートアップ」としての進化を遂げています。
しかしその裏側では、コロナ禍での組織改革、既存事業の立て直し、新規事業の立ち上げなど、多くの困難を乗り越えた経営戦略と採用戦略が明確にありました。
技術偏重の組織における、ビジネスサイド視点の欠落と実行力不足をどう乗り越えたのか?
今回は、三代目の丸山取締役に、この課題を打破するために導入した施策の背景、そして復活を遂げた「攻めの体制」について詳しく伺います。

1. 危機的状況下で露呈した老舗の課題:「技術偏重」が生んだ「実行者の不在」
―コロナ禍で売上が8割減という壊滅的な状況下で、痛感された最大の経営課題は何でしたか?
丸山製麺所は、全従業員50名のうち8名を製麺技能士が占める熟練の職人集団であり、その麺の品質と製造技術は業界でも群を抜いています。経営を担う社長(父)もまた生粋の職人気質であり、製麺に対する強いこだわりは会社のDNAとなっています。
しかしながら、この高い技術力の裏側で、ビジネス経験を有する人材は皆無に等しいという構造的な問題も抱えていました。組織風土が技術力への過度な偏重に傾いていたため、既存・新規事業を問わず、持続的な成長を牽引できる組織体制ではないことが最大の経営課題でした。
その最中、新型コロナウイルスの感染拡大が発生しました。主要な取引先である飲食店が営業自粛に追い込まれた結果、売上は一時的に8割減という壊滅的な打撃を受けます。緊急事態宣言の解除後も業績の回復は遅れ、従業員の出社率を半減させるなど、厳しい経営判断を迫られました。
この危機的な状況を踏まえ、社長(父)と徹底的に議論した結果、私が旗振り役となり、既存事業の再構築と新規事業の創出を本格的に推進する運びとなりました。

2. 実行力不足とコストのジレンマをどう乗り越えたか
―当時の厳しい経営状況の中で、採用に関して具体的にどのような課題に直面されましたか?
1. 組織内の「実行力」不足
一つ目は、「実行を担えるメンバーの不在」です。 前述の通り、当社の社員の大半は製麺の職人であり、営業や企画といった事業サイドでの経験が決定的に不足していました。また、社員の年齢層が比較的高いため、彼らのキャリアと適性を考慮すると、業務内容を根本的に変更して配置転換を行うことは非現実的でした。
2. 年収の壁と採用のジレンマ
二つ目は、「求める人材と年収レンジのミスマッチ」です。 自社内での人材選抜が難しい以上、外部からの採用が唯一の手段となります。しかし、新規事業の立ち上げ経験者や、同業界で確かな実績を持つ即戦力の人材となると、当然ながら年収レンジは一気に高騰します。当時の業績が低迷している状況下では、そうしたハイレイヤーな人材を採用することは財務的に現実的ではないと判断せざるを得ませんでした。
以上の構造的な課題から、当社の活路は「高い実行力を持ちながらも、年収レンジが比較的安価な若手人材」を採用することにあると結論付けました。
その最適なソリューションを探す中で出会ったのが、Maenomery社が提供する「GRTI人材の紹介サービス」でした。
3. 「本気でやり抜いた経験」を評価:GRIT人材を導入した最大の決め手
―数ある採用サービスの中で、GRIT人材に着目されたのはなぜですか?
私たちがMaenomery社に魅力を感じた最大の理由は、スポーツ、芸術活動、あるいは長期インターンやアルバイトなど、何かしらを「本気でやり抜いた経験」を持つ、いわゆるGRIT人材を紹介してくれるという点にあります。
GRITとは?→(https://www.maenomery.jp/article/5)
なぜなら、私たちが取り組む既存事業の立て直しと新規事業の立ち上げは、正解が見えない不確実性の高いミッションです。したがって、困難な状況でも業務を遂行し続ける「実行強度」と、失敗しても何度でも起き上がれる「復元力」を持ち合わせた人材が不可欠でした。
加えて、大学との独自の集客コネクションを保有しており、若手人材のプールが豊富であることも魅力的でした。これにより、当社のターゲットとする人材に多く出会える可能性が高かったのです。
4. 伴走型の丁寧なすり合わせ:求人要件を超えた採用プロセス
―導入時のプロセスや、担当者とのすり合わせで印象的だった点があれば教えてください。
サービス導入にあたり、まずは専任の法人担当者の方と、じっくりと要件のすり合わせを行いました。
すり合わせは、単なる業務内容や採用条件の話で終わらず、会社の創業時の想いやカルチャー、そして社内の人間関係(パワーバランス)といった、普段はなかなか話さない極めて深い部分にまで及びました。この丁寧なヒアリングを通じて、担当者の方が私たちに寄り添い、「伴走」してくれているという心強い印象を強く受けました。

ー要件をすり合わせた後はどのように進みましたか?-
その後、当社の状況にマッチした候補者を数名ご紹介いただき、面接を実施しました。中でも、スポーツ経験を持つ候補者が当社の求める「実行強度」と「復元力」を体現しており、迷うことなく即入社が決定いたしました。
5. 停滞事業を動かした「泥臭い実行力」:入社後の具体的な活躍と成果
―実際に採用されたGRIT人材は、入社後どのように活躍されていますか?具体的な成果があれば教えてください。
現在2名が入社してくれたのですが、具体的な成果としては下記が挙げれます。
取引者数倍増: 新規事業の開始から、取引者数は300〜400社に増加し、会社全体の取引者数が導入前の倍以上へ。
代理店数の増加: ほぼゼロだった代理店数が、彼らの営業活動により50〜60社に増加。

彼ら(GRIT人材)の最大の特徴は、根底に「向上心」があることです。「与えられた役割のベースを徹底的に頑張りたい」というマインドセットを持っており、その結果、対応スピードの向上や顧客対応の質の向上を常に考えながら取り組んでおります。また、メンタル面でもブレが少なく、安定的に、そして実直に業務を遂行してくれる点も魅力です。
私たちのような中小企業は、基本的に不利な状況から競争に勝ちに行く必要があります。そのため、迅速な対応やサンプルの即日提供といった彼らの行動特性そのものが、他社に対する決定的な競争優位性となりました。
実際に、彼らの地道で泥臭い営業活動のおかげで、新規事業や代理店開拓を自律的に推進してくれました。その結果、停滞していた事業は大きく動き出すことになったのです。
小川さん(写真右)
2023年11月に入社。
幼少期からサッカーを続け、大学卒業後はサッカースクールの指導者としてアシスタントを経てメインコーチとなる。その後、ビジネスマンとしての成長を求め株式会社丸山製麺へ入社。
須藤さん(写真左)
2024年8月に入社。
幼少期はサッカーに没頭し、高校から陸上に転向し、大学へも陸上競技を目的に入学。数々の入賞を経験。経営学部にて勉学へも励み、文武両道を体現。

6. 導入における注意点:ポテンシャルを成果に変えるために:育成体制とオンボーディングの重要性
―GRIT人材のポテンシャルを最大限に引き出すために、特に注意すべき点や、丸山製麺様で工夫された点はありますか?
GRIT人材のポテンシャルを最大限に引き出すためには、「育成に時間を投じること」が重要です。
中小企業には、体系的な育成・評価システムが存在しないことが多く、せっかく人材を採用しても放置状態(オンボーディングの欠如)に陥りがちです。また、周囲の上司にビジネスサイドの経験がない場合、発生した不明点や課題が明確にならず、コミュニケーション上のエラーや認識齟齬が生じてしまうリスクがあります。
さらに、採用したGRIT人材のビジネス経験はまだ浅いため、名刺交換や提案書の構成といった基本的な「正しい業務遂行方法」を体系的にインストールする必要があります。
彼らの持つ熱意と実行力を成果に繋げるためには、具体的な道筋を示し(方向付け)、初期段階においては伴走することが不可欠です。彼らの粘り強い努力を正当に評価し、その方向性を定めることが、育成の鍵となります。自身が直接指導にあたるか、あるいは副業人材などの外部リソースも活用し、実効性のある教育体制はある程度必要だと考えています。
7. 今後の展望:技術と実行力が拓く未来
―攻めの体制を確立された今、今後の事業展開や、GRIT人材に期待する役割についてお聞かせください。
これまでの当社は、一都三県を中心に冷蔵麺を中心に商売をしてきましたが、現在は缶詰や冷凍といった最新技術も取り入れ、全国に市場を広げています。
今後は更にグローバル市場を視野に入れ、当社のミッション「ひとりでも多くの人へ美味しいラーメンを届ける」という想いを実現したいと考えています。
実際のところ、海外でのラーメンの人気と、製麺所の供給数を考えると、需要と供給のバランスから見ても、大きな成長機会が眠っています。
今すぐ「単独で海外進出」とまではいきませんが、まずは海外に出店する日系企業へのサポートや、ジョイントベンチャー(JV)のような形で、私たちも一緒にお店を出していくことも選択肢として考えています。
そのためにも、私たちが培ってきた製麺技術を活かして、既存事業の売上を更に伸ばしたいと思います。また同時に、会社全体として更に多くの新しい事業を生み出せるよう、経営体質の変革へも取り組みます。