面接通過率が30%から80%へ。少数精鋭企業の「採用の勝ち筋」
プロフィール
高原 直人 (Takahara Naoto) 株式会社grits 代表取締役
大学卒業後、株式会社テレウェイヴなどを経て2017年に創業。大阪・福岡を拠点に、医療・法律業界特化型のWebマーケティング事業を展開。「注目の西日本ベンチャー100」に選出され、営業利益率30%超の高収益体制を牽引する。
営業利益率30%超。少数精鋭組織が挑んだ「妥協なき採用変革」
従業員約30名の少数精鋭体制でありながら、営業利益率30%超という驚異的な数値を叩き出す株式会社grits。その圧倒的な「高収益体質」は、業界内でも異彩を放っています。しかし、その高い生産性を維持し続ける裏には、組織の成長を阻む深刻な「採用リスク」がありました。1人あたりの生産性が高いため、たった1名のミスマッチが経営数値に与えるインパクトは甚大になります。
本記事では、採用基準を一切落とすことなく採用を成功軌道に乗せた、その具体的な変革プロセスを紐解きます。

1. 直面した2つの課題:「歩留まりの悪さ」と「機会損失」
―マエノメリと出会う前の、採用活動において具体的にどのような課題を抱えていたのでしょうか?
「求める人材とのミスマッチ」と「内定辞退率の高さ」です。
課題①:一次面接通過率が30%と低迷していたこと
1つ目は、選考における「一次面接通過率の歩留まりの悪さ」です。 応募の「母数」自体は確保できていました。しかし、私たちが求める人物像(高い自己成長意欲と素直さ)と実際に紹介される学生の質には、大きな乖離(ズレ)がありました。
具体的には、表面的な受け答えはできても、弊社のカルチャーにフィットするマインドを持った学生が非常に少なかったのです。 「とりあえず全員と会う」というスタンスで面接を行っていましたが、結果として半分以上の学生を不合格にせざるを得ず、多大な面接工数を割きながらも成果に繋がらない状況が続いていました。
課題②:内定辞退者が3名も発生してしまったこと
2つ目は、フォロー不足による「機会損失」です。 当時、人事専任はおらず、経営者である私が1人で採用実務を行っていました。そのため、内定を出した後、学生の不安を解消したり、動機づけを行ったりする十分な時間を確保できませんでした。
最終的に、3名の内定承諾後辞退を出してしまったこともあります。 「質の高い人材を見極める効率の悪さ」と「内定後のフォロー体制の欠如」。この2点が、採用成功を阻む大きな壁となっていました。

2. 転機:価値観の一致が生んだ「GRIT採用」への転換
―多くの採用サービスがある中で、なぜMaenomeryを選んだのでしょうか?
きっかけは、「企業理念への共感」でした。 普段、営業メールには目を通しませんが、『Maenomery(マエノメリ)』という社名に目が止まりました。 実は会社員時代、「倒れるときは前のめりで倒れろ」という言葉を指針に働いてきました。彼らが掲げる「GRIT(最後までやり抜く力)」というコンセプトは、まさに私が経営において最も大切にしている価値観そのものだったのです。
GRITとは?→(https://www.maenomery.jp/article/5)
ー導入の決め手は何ですか?
導入の決め手は、単なる「紹介」ではなく「選抜」するというフィルターでした。マエノメリ社は、ただ候補者を紹介するのではなく、学生の「心理的特性」を見極めた上で推薦してくれるとのことでした。 学歴や表面的なスキルではなく、「何かに本気で打ち込み、やり抜いた経験があるか」。この根拠を学術的観点から面談を通して人材を選抜する仕組みが、当社の求める人材に最短距離で出会えると確信しました。

3. 成果:歩留まり改善と機会損失の回避
―導入後、採用課題であった「歩留まり」と「内定辞退」は解消されましたか?
はい。Maenomeryの導入により、「採用の歩留まり」と「候補者フォロー体制」の両面において、抱えていた課題を解決することができました。
成果①:通過率が30%から80%へ(採用の歩留まりを改善)
1つ目の課題であった「歩留まりの悪さ」は、スクリーニング精度の向上により大きく改善しました。 他社経由では30%ほどだった一次面接通過率が、Maenomery経由では80%台へと推移しています。
事前に「自社のカルチャー」と「候補者の資質」のマッチングが完了しているため、面接の段階でのミスマッチが減少しました。現在、26卒の学生5名の入社が決まっていますが、役員メンバーからも「自社の採用要件を十分に満たしている」との高い評価を得ています。
成果②:内定辞退の阻止(キャリアバディによるフォロー)
2つ目の課題であった「内定後のフォロー不足」については、担当者が「キャリアバディ」として伴走する連携体制が整ったことで解消しました。 以前は私の手が回らず対応が後手になることもありましたが、現在は担当者が候補者と密に連絡を取り、「他社選考との比較状況」や「懸念点」といったリアルな一次情報を共有してくれます。
私はその詳細情報に基づき、適切なタイミングで連絡を入れるだけで済みます。「多忙な経営業務の裏で、「キャリアバディが学生との接点を維持してくれる」という分業体制が確立できたことで、結果として辞退による採用機会の損失を未然に防ぐことができています。

4. GRIT人材の強み:「行動量」×「論理的対話力」
―内定を出した5名のGRIT人材にはどのような特徴がありますか?
彼らの共通点は、スポーツなどで培った「やり抜く力(GRIT)」に加えて、「論理的な対話力」を兼ね備えている点です。
彼らは競技生活を通じて、「指導者の意図や戦術を正しく理解し、考えながら実行する経験」を積み重ねています。厳しい勝負の世界で、感情論ではなく「どうすれば勝てるか」を思考し続けてきたバックグラウンドがある。そのため、面接の場においても「質問の意図」を瞬時に汲み取り、的確な回答を返すことができます。
自社には、確立された勝ち筋(マニュアル)がありますが、それを使いこなすには、まず教えを正しく理解する「素直さ」と「吸収力」が欠かせません。この特性を持つ彼らなら、入社後も自ら学び、組織と共に成功を再現する中核人材になってくれると確信しています。

5. 今後の展望:採用難時代を勝ち抜く「未来への投資」
―最後に、今後の展望とメッセージをお願いします。
来期の27卒採用では、目標を5〜8名に拡大し、外部から人事顧問を招聘するなど体制を強化します。もちろん、Maenomeryとのパートナーシップもより深めていく予定です。
現在はどの企業も採用難に直面していますが、私たちはこの環境を言い訳にしません。 なぜなら採用とは、単なる人員補充ではなく、「若者に未来の選択肢を提供する仕事」だからです。 20代という貴重な時期に、仕事に没頭し「稼ぐ力」を身につける。それが30代以降の人生の自由度を高めます。 この責任とやりがいがあるからこそ、私たちは泥臭く採用に向き合い続けます。厳しい時代ですが、共に「やり抜く力」を持つ若者の未来を作っていきましょう。