【AbemaTVの逆境を支えた「やり抜く力(GRIT)」】学生300名が熱狂するGRIT就活イベントの裏側に迫る
登壇者紹介
稲富龍太郎
株式会社サイバーエージェント|プラットフォームビジネス本部局長AbemaTVの編成責任者として、ワールドカップやTHE MATCHなど巨大プロジェクトを指揮。「21世紀を代表する会社をつくる」というミッションのもと、コンテンツ戦略・アライアンス事業を統括。

星野崇史
株式会社Maenomery|代表取締役社長

はじめに
AIがあらゆる仕事を効率化し、「始める」ことのハードルが急速に下がっていく時代。
だからこそ、企業が本気で求めはじめている力があります。
それが「やり抜く力=GRIT」です。
このGRITをテーマに、熱量ある学生と、それを求める企業をつなぐ対面型マッチングイベント「GRIT就活」。
今回ご登壇いただいたのは、株式会社サイバーエージェントでAbemaTVの編成責任者を務める稲富龍太郎氏。ワールドカップやTHE MATCHなど、数々の大型プロジェクトで「熱狂」を生み出してきた人物です。
10年仕込み続けた熱狂の正体、
学生の心を動かした言葉、
そして採用の未来──
株式会社Maenomery代表・星野が、稲富氏に話をお伺いしました。
1. AI時代に問われるのは、「やり始める力」と「やり切る力」
星野: 稲富さん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、今回のGRIT就活イベントに参加されていかがでしたか?
稲富氏: よろしくお願いします。我々は実は、こういう説明会的なものに多く出るタイプではないんです。ただ実際に行ってみて、「GRIT(やり抜く力)」というテーマがあるからか、意志が強そうな方が多い印象でした。熱量も含めて、すごく感じるものがありましたね。
星野: ありがとうございます。まさに我々が届けたい空気を感じていただけて嬉しいです。本日は「GRIT」というテーマで伺っていきたいのですが、稲富さんご自身は、このキーワードをどう捉えていらっしゃいますか?
稲富氏: AIをはじめ、いろんなツールが揃ってきて、「やる」ことの難易度がどんどん下がっていると感じます。
そんな時代だからこそ大事なことが2つあって。一つは「やり始めること」。起業でも、就活で進路を決めるときも、この始動の部分はやはり大事なんです。
もう一つは「やり切ること」。集めた情報をもとに決断し、最後に成果へ結びつける。ここはおそらく、いまのAIには代替できない部分です。だからこそAIの時代に、やり始めてやり切るというGRITが大事になるのかなと。
星野: 「始める」と「やり切る」、この2つだけが残る、と。これは我々が学生さんを見ていて感じることでもあります。スキルや知識はあとから身につけられますが、「最後までやり切れるかどうか」はその人の中にあるものですよね。
稲富氏: まさにそうなんです。AIで誰でもスタートが切れる時代になればなるほど、最後まで走り切れる人の希少価値は上がっていくと思います。

2. AbemaTVが10年かけて仕込んだ「熱狂の仕組み」
星野: 稲富さんといえば、AbemaTVの編成責任者として、ワールドカップやTHE MATCHなど、まさに「熱狂」を生み出されてきた印象があります。きらびやかに見える一方で、その裏には相当な逆境もあったんじゃないかなと。
稲富氏: 全然ありますよ(笑)。寸前で企画がお蔵入りになることも、当たり前のように起こっていました。
いま会長になりました藤田が、Abemaを10年かけて大きくしていくことを大きなテーマとして掲げていたんですね。
テレビの歴史が60年ある中で、我々はまだ始めて数年。
「新しい未来のテレビを作るには、腰を据えてやらなければいけない」というビジョンがあったので、手を変え品を変え、覚悟を持って模索していた時期でした。
星野: 10年という長いスパンで覚悟を決めていたからこそ、目先の逆境に飲まれなかったんですね。具体的にはどんな仕込みを?
稲富氏: 2018〜19年頃、「我々がやるべきことは何なのか」と原点に立ち返る動きがあったんです。サイバーエージェント全体のパーパスとして「インターネットで日本の閉塞感を打破する」というキーワードがあるんですけど、「Abemaはその象徴でなければならない」と。
星野: 会社全体のミッションを、Abemaとしてどう体現するかを改めて言語化していったわけですね。
稲富氏: そこからAbemaのキーコンセプトとして5つのキーワードを定めたんですが、特に大事にしていたのが「同時性」でした。
星野: 同時性、ですか。

稲富氏: これはオンデマンドの世界では生まれないものなんです。
テレビがかつて持っていた、みんなで同じ瞬間に熱狂して、同じ話題で盛り上がる感覚。
そこから流行やムーブメントが生まれる。
無料のポテンシャルを持っているAbemaだからこそできることだと思いました。
星野: その「同時性」を、どう熱狂につなげていったんですか?
稲富氏: 規模が小さかった当時の恋愛リアリティーショーでも、熱狂は少なからず生まれていたんですよ。この熱狂は我々が作れるものなんだと信じて、いかに大きくするか、コンテンツがバズったときに倍々に増やしていくにはどうするか、ずっと考え続けていました。
それが2022年に良いコンテンツが入ってきたタイミングで、それまで作ってきた仕組みが倍々ゲームになって広がっていった感覚です。
星野: 信念を持って10年仕込み続けたからこそ、爆発する瞬間に立ち会えたわけですね。まさに「やり続ける」ことの強さです。
稲富氏: そうですね。いま振り返っても、信念を持ってやり続けることは大事だったなと思いす。
3. 学生に届けた言葉「選んだ後に、正解にする」
星野: GRIT就活には約300名の学生が来てくれて、そのうち稲富さんのトークセッションには60〜70名が参加してくれました。実際に登壇されてみて、学生さんに対してどんなことを意識されましたか?
稲富氏: GRIT就活に来てくださる方は、我々がよく言うんですけど、「鼻息の荒い人材」が多いんですよね。威勢も含めて、自分の成長への意欲がすごく強い人が多かったなと。
一方で、その活力をどこにぶつければ自分の人生が一番明るくなるのか。
どう身を乗り出せば新しい可能性が引き出されるのか。
やはりそこを悩む時期でもあるんです。
私自身、就活のときはそうでしたから、よくわかるんですよ。
星野: その悩みは、どの世代の学生さんも抱えているものですよね。我々もそこに伴走している立場なので、すごく共感します。稲富さんは学生さんに、どんな言葉を届けたんですか?
稲富氏: 結局、これって正解はないんです。
選んだ瞬間に正解があるんじゃなくて、選んだ後に、自分の選んだものを正解にしていく。
人生のすべての決断ってそういうものなのかなと。
だから、選ぶことに一生懸命になるよりも、「選んだ後に自分のキャリアがこんな風になったら面白いかも」って思えるような話をしたかったんですよね。
私はいま10年目なんですけど、「10年後にこんなところでこんな話ができたら格好いいだろうな」と思えるかどうか。そういうことを意識してセッションには臨みました。
星野: 「選んだ後に正解にする」。まさに、稲富さんがAbemaで10年やられてきたことそのものですね。学生さんの心にも深く刺さったんじゃないでしょうか。
稲富氏: どうですかね(笑)。ただ嬉しかったのは、セッションが終わって私が席を外して帰るタイミングで、「すいません、先程聞いていた者なんですけど」と質問を投げてくれた学生が2〜3名いたことです。「この話のここに共感して、いま自分はこういう状況なんですけど、どんなアドバイスをもらえますか?」と。スポンジのように成長していくってこういうことなんだな、と思いながら見ていました。
星野: それは本当に嬉しい瞬間ですね。
我々も運営側として当日見ていたんですが、ブースに駆け込んでくる学生さんの目の輝きが印象的で。「こういう場をつくれてよかった」と心から思える光景でした。

4. 採用で見るのは「素直でいいやつ」
星野: 稲富さんは、ふだん採用の場面で、どんな学生さんを「いい」と感じるんですか?
稲富氏: サイバーエージェントの採用方針でもあって、私もすごく大事にしているのが「素直でいいやつ」という言葉なんです。
ここで言う「素直」は、何でも言うことを聞くやつ、ということではないんですよ。
世の中の情勢も、自分自身のこともフラットに判断できて、「いまの自分や次の自分に必要なことは何か」を求めたときに、これまでとは違うことをしなければいけない場面でも対応できる。
自分の考え方すら変えられる柔軟性を持っている、ということですね。
そして「いいやつ」の部分でいうと、「自分の軸はこれだ」というものはちゃんと持っている。
いろんなことをやっていくときにブレずに、ただ適切に自分を対応させながら進められる人材は、すごく強いんです。だから就活では、そういう経験を中心に聞いていくことが多いですね。
星野: シンプルだけど、本質を突いた言葉ですね。我々も学生さんと向き合うときに同じ感覚を持っています。スキルじゃなくて、人としての芯。それがあるかどうかをどう引き出すかが、我々の仕事でもあるなと。
5. GRITは連鎖する──Maenomeryが体現する組織哲学
稲富氏: 逆に、ちょっと私から質問してもいいですか?イベントに参加してすごく思ったんですが、あれだけGRIT、まさに何かをやり抜く力を持った人材たちが集まっていて。私は皆さん初見でしたけど、本当に力のある人たちだなと感じたんです。あれって、どうやって見極めたり、集めていらっしゃるんですか?
星野: ありがとうございます、ぜひお話しさせてください。前提として、Maenomeryは立ち上げ当初、「GRIT」というキーワードよりも「体育会学生」に着目して就活支援を始めた会社なんです。
稲富氏: そうだったんですね。
星野: ただ、続けていくうちに気づいたことがあって。体育会出身だからといって、必ずしも全員がGRITを持っているわけではなかったんです。スポーツが終わった後にGRITを引き出せずに終わってしまう学生もいて、そこに課題感がありました。
逆に、スポーツ以外の経験でGRITをしっかり兼ね備えている方もたくさんいる。弊社にもいま約60名のスタッフがいますが、体育会出身じゃないスタッフも多くいて、何か一つのことをやり続けてきた経験を持つ人材が揃っています。
そこで我々は、体育会系という枠ではなく、「GRIT=やり抜く力」を見極めてお客さまに紹介していく、というテーマに進化させたんです。
稲富氏: 体育会という入り口から、より本質的なGRITというテーマに変えたわけですね。
星野: それを支えているのが、弊社の3つのバディ体制なんです。
一つ目が「RB(リクルーティングバディ)」。
企業様の採用担当者として伴走するメンバーです。
二つ目が「GB(GRITバディ)」。
大学のキャリアセンターや学生コミュニティ、部活動などに出向いてセミナーを行い、就活のきっかけを提供する役割を担っています。
三つ目が「CB(キャリアバディ)」。
興味を持ってくれた学生に対して、キャリアの伴走者として並走するメンバーです。
くどいくらいに「バディ」を使うんですけど(笑)。
稲富氏: 徹底してますね(笑)。
星野: これにはちゃんと理由があって、GRITという「やり抜く力」を引き出すには伴走が不可欠だと思っているんです。一方的な指導(アドバイザー)じゃなくて、一緒に走る存在。それが「バディ」という名前の由縁なんですよ。
稲富氏: これ、すごくわかります。イベントに参加してみて、一つ仮説を持っていたんですよ。「GRITしている人の周りには、GRIT人材が多いんじゃないか」って。
担当いただいたRBの皆さんしかまだ見えていないですけど、その本人自体がGRIT人材なんですよね。
おそらく、CBやGBの皆さん本人がGRITを体現していて、その人が学生の採用に伴走していく。学生と関わる中で「ここまでGRITしてくれるなら、自分もやろう」って連鎖していくものがあるんじゃないかなと感じました。
星野: まさにその通りなんです。我々のスタッフ自身がGRITを体現していないと、学生さんの心は動かせない。だから社員もGRITを兼ね備えた人材を採用していますし、お客さまへの伴走でもその姿勢が出ているんだと思います。稲富さんからそう言っていただけると、我々の組織が目指してきた方向性が間違っていなかったんだなと、改めて思えますね。
稲富氏: いやもう、本当に素晴らしい取り組みだなと感じました。

6. GRITは、スポーツの枠を超えていく
星野: 今回のGRIT就活に参加されて、稲富さんから見たイベントの伸びしろも、ぜひ伺いたいです。
稲富氏: お見受けすると、6〜7割の方々がスポーツ中心の学生でしたね。特に私に質問してきてくれた方々は、スポーツをやっている方が多くて。
ただ、GRITって言葉は、スポーツだけじゃないと思うんですよ。芸術とか、それこそお笑いとか、そういったものにも通用する言葉だなと。むしろそういう人たちのほうが、自分で捉えながら新しいことをやっている部分は結構あるんじゃないかと。
星野: たしかに、それはすごく感じます。
たしか、令和ロマンの髙比良くるまさんがご友人なんですよね?
稲富氏: そうなんです。(笑)彼って、中学の頃からずっとお笑いに集中していて。お笑い芸人さんというより、やっぱり「面白い人材」なんですよね。
それが突き抜けると、ああいう風にM-1も含めて取っちゃう。
これって一つの「やり切り」の形になっているので、こういう人生もあるんだなと感じたんです。いまは僕らの頃よりも、こういう生き方が肯定される時代なのかなと思いますね。
昔ユーチューバーがよく言っていた「好きを仕事にする」が、まさにそういう時代に来ているのかなと。
星野: それは本当にそうですね。Maenomeryでも、体育会系のみならず、芸術やお笑い、何かをやり続けてきた経験のある学生さんに、もっと出会っていきたいと思っています。

7. こんな企業へ届けたい──採用の未来へ
星野: 最後に、どのような課題感を持つ企業様に、このGRIT就活イベントをお勧めできそうですか?
稲富氏: いわゆるプル型の採用、つまり応募が来てから選んでいくやり方は、結構難易度が高いと思っているんです。
自分たちの会社に合わない方々もターゲットに入ってしまう広げ方になりがちで。
GRITは、どの企業、どの時代においてもすごく大事なものなので、そういう人材がクリティカルに欲しい企業様にとっては、まずすごく魅力的なイベントだと思います。
もう一つは、新規事業を始める企業や、もっと大きくチャレンジしていこうというフェーズの企業ですね。専門性で取っていくのも一つですが、そういう局面ではまさにGRITが大事になってくる。スキル優先よりも、スタンス・マインド優先に切り替わる時期だと思うんです。そういう企業の皆様には、本当にうってつけだと思います。
星野: スキルじゃなくてスタンス、というのは本当にそのとおりで。我々もそこを軸に企業様と学生さんをつないでいきたいと思っています。最後に、本気で採用に向き合う企業様へメッセージをいただけますか。
稲富氏: 求められる人材要件が、本当に幅広い時代になってきたと思っています。スキル一つとっても、昔は「パソコンができる」だけでちょっとした能力だったところから、AIを使いこなす能力、共に働く力みたいなものが基礎になってきていて。要件がすごく幅広くなっていますよね。
それでも変わらない軸が、いま我々がテーマにしているGRITなんです。
これは変わらないテーマであって、GRITがあるということが、スキルを育成していくための必要条件になっていくのかなと思っています。
星野: ありがとうございます。28年卒のGRIT就活イベントは、さらに規模を拡大して、133社・2,000名の学生を呼んで開催します。今回お話を伺って、GRITというテーマがいかに今の時代に必要かを改めて感じました。スポーツに限らず、何かを「やり抜いた経験のある」すべての学生さんと、本気で向き合う企業様をつなぐ場として、進化させていきたいと思います。本日はありがとうございました。
稲富氏: こちらこそ、ありがとうございました。