組織GRITとは?─「やり抜く組織」は、どうすればつくれるのか
はじめに
組織GRITとは、ひとことで言えば「組織として、長期目標をやり抜く力」のことです。
個人の根性や気合いの話ではありません。
組織全体が同じ方向を向き、困難があっても前進し続けられる状態と、それを支える構造を指します。
そして近年の研究では、ひとつのことがわかってきました。
人がGRIT(やり抜く力)を発揮できるかどうかは、本人の性格以上に「その人が置かれた組織の状態」に左右される、ということです。
逆に言えば、組織のつくり方次第で、人はやり抜きやすくもなれば、途中で諦めやすくもなる。
この記事では、組織GRITとは何かを研究の知見から整理したうえで、Maenomeryが「やり抜く組織はどうつくられるのか」をどう捉えているかをお伝えします。
組織GRITとは何か─個人のGRITとの違い
GRIT(グリット)という言葉は、聞いたことがある方も多いかもしれません。
心理学者のAngela Duckworth(アンジェラ・ダックワース)が2007年に提唱した概念で、「長期目標に向かって、情熱を持ち続け、努力をやり抜く力」を意味します(Duckworth et al., 2007)。
詳しく書いている記事はこちら:GRITとは?
GRITの研究背景を簡単に説明すると、やり抜ける人と、途中で諦めてしまう人──その差を生むものは何か?そういう問いから出発した概念です。
ところが、研究が進むにつれて、ひとつの疑問が浮かび上がってきました。
個人がGRITを持っていても、組織として結果が出るとは限らない。
優秀でやり抜く力のある人材が集まっているはずなのに、組織全体としては前に進まない。
逆に、突出したスター人材がいなくても、粘り強く成果を出し続けるチームがある。
この現象については、個人のGRITだけでは説明がつかないのではないか?
そこで近年、研究は「組織レベルのGRIT」に目を向け始めました。
GRITの提唱者であるDuckworth自身も、2018年にThomas H. Leeとの共著で
「Organizational Grit(組織GRIT)」という論考をHarvard Business Reviewに発表しています(Duckworth & Lee, 2018)。
そこで示されたのは、GRITは個人の中だけで完結しないということです。
人がGRITを発揮できるかどうかは、その人を取り巻く組織の状態に大きく左右され、同じ人でも、組織が違えばGRITの発揮度は変わる、ということです。
ここに、個人のGRITと組織GRITの決定的な違いがあります。
個人のGRITが“その人の中にある力”だとすれば、組織GRITは「人と組織のあいだに生まれる力」。
だからこそ、組織GRITを高める打ち手は、「個人を鼓舞すること」だけでは足りません。
組織GRITは、「揃える」ことから始まる
では、やり抜く組織は、どうすればつくれるのか。
制度を整える。理念を掲げる。号令をかける。どれも大切です。
ただ、Maenomeryは、もっと手前に出発点があると考えています。
それは、GRITの高い人を、組織に揃えることです。
順番に説明します。
「やり抜く力」は伝染する
組織心理学の実践者として380社以上の組織を見てきた坂井風太氏(株式会社Momentor代表)は、弊社との対談のなかで、組織GRITをこう読み解いています。
組織GRITが高い組織の条件は、突き詰めると二つ。
- 「GRITの高い人材が組織内にいること」
- 「共通の目標があること」
そして、決定的に効くのは前者だおっしゃっていました。
なぜ人がいることが効くのか。
その鍵は「感情伝染」と呼ばれる現象です。
隣の同期や先輩が、どんな苦境でも逃げずにやり抜いている。その姿を間近で見ると、「自分にもできそうだ」という感覚が生まれる。
近くにいる人、同じ境遇でやり抜いているのを見て、やり抜く力は周囲へ伝染していくのです。
坂井氏はこれを、『鬼滅の刃』の「痣(あざ)」に例えています。
(ご存じない方は大変申し訳ございません。)
主人公が死に物狂いで痣を出すと、志を同じくする仲間たちにも次々と痣が発現していく。一人のGRITが、似た者同士のあいだで連鎖していく──組織GRITの本質は、この伝播にある、と。
出発点は「人を揃えること」にある
ここからひとつの結論が導かれます。
組織GRITを高める起点は、制度でも号令でもなく、「GRITの高い人を採用し、火種をつくること」だということです。
火種がなければ、燃え広がりようがない。
逆に、本気でやり抜く人が組織のなかに複数いれば、その熱は「似た者同士」のあいだで伝染し、組織全体の推進力になっていく。
これは、研究が示す「組織GRIT」の知見とも重なります。Duckworth と Lee も、「GRITのある文化を築くことは、GRITのある個人を選び、育てることから始まる」と述べています(Duckworth & Lee, 2018)。
制度づくりは、その後でいい。
まず、火種となる人がいるか。
Maenomeryが「GRIT人材の採用」にこだわるのは、ここに理由があります。
「やり抜く力」には影もある
ここでひとつ、正直に触れておかなければならないことがあります。
GRITは、無条件に良いものではありません。
「やり抜く」という力は、矛先を誤れば、ハラスメントの道具になったり、不正につながったりする。
この「光と影」については、下の記事で深く掘り下げました。組織GRITを本気で考えるなら、避けて通れないテーマです。
▼ あわせて読みたい
【坂井風太×GRIT(やり抜く力)】組織崩壊を招くダークGRITとは──「組織GRIT」と潜むリスク──
では何から始めるか
組織GRITは、「人」と「組織のつくり方」、その両方で決まります。
まずは、リーダーが、やり抜きやすい土壌を耕すこと。
「リーダーが具体的に何をすればいいか」は、それだけで一本の記事になるテーマです。変革型リーダーシップの観点から、別稿で詳しく論じています。
▼ あわせて読みたい
「“組織グリット”を2ランク上げるリーダーの特徴3つ──変革型リーダーシップ理論からの考察」
そしてもうひとつは、火種となる「GRITの高い人」を組織に迎え入れること。
Maenomery(マエノメリ)は、GRIT(やり抜く力)を学術的なアプローチから見極め、組織に火を灯すGRIT人材を企業へご紹介しています。
「制度は整えたのに、なかなか前に進む空気が生まれない」
そう感じている方は、組織に「火種」となる人がいるか、というところから見直してみるのも一つの手かもしれません。
お気軽にご相談ください。
まとめ
組織GRITとは、組織として長期目標をやり抜く力のことです。
そして、人がやり抜けるかどうかは、その人の性格だけでなく組織の状態に大きく左右される──これは研究でも示されている知見です。
そのうえでMaenomeryは、やり抜く組織の出発点は「GRITの高い人を揃えること」だと考えています。
火種となる人がいて、その熱が広がっていく。
そこに、リーダーが耕す土壌が重なったとき、組織は「やり抜く組織」へと変わっていきます。
組織にまず圧倒的な火種はあるか。
ぜひ組織のメンバーの顔を想像しながら、考えてみてください。
引用文献
Duckworth, A. L., Peterson, C., Matthews, M. D., & Kelly, D. R. (2007). Grit: Perseverance and passion for long-term goals. Journal of Personality and Social Psychology, 92(6), 1087–1101.
Duckworth, A. L., & Lee, T. H. (2018). Organizational grit. Harvard Business Review, 96(5), 98–105.